イラクで活動するPMC(民間軍事会社)と、そこで働くコントラクター(傭兵)を描いた、
「戦場の掟」(スティーヴ・ファイナル著。伏見威蕃訳 )(2009/9/25)を読んだよ。
原題は「BIG BOY RULES」
ところでみなさんは「傭兵」というとどんな人間を想像しますかね?
スキンヘッドの巨漢でサングラスなんかを掛けていて、酒と冗談が好きで、
車内ではデスメタルを聞いている荒くれ者。
「さすがにそんなベタなイメージは描いて無い」と反論されそうですが、
うん、そのベタなイメージで正解。
そんな強面の男が「そういえば俺はまだ拳銃で人を撃ったことが無かったな」
なんてセリフと共に、iPod再生中の車中から走行中のタクシーへ向けてぶっぱなし、
「当たったぜ! ヒャッハー!」な感じで、さしたる罰も受けること無く帰国。
正規の軍人なら軍法で裁かれることもあるのだけれど、
傭兵を罰するのはイラク国内法っていう、機能していない代物なので。
まぁイラクと傭兵はそんな感じです。怖すぎだね。
と、ちょっと極端な例を書いてしまったけれど、傭兵の内訳は様々です。
戦場じゃないと生きられないというような、冒険好きの野郎から、金目的の出稼ぎ労働者まで。
出世すると前線に出れないのでやってきた元海兵隊員。殺人課の刑事。
元教師。記者兼傭兵。ベトナム帰還兵。前科者。
フィジー軍兵士。グルカ兵。イラク人。元センデロ・ルミノソ。
兵士としての質も、人間性も玉石混合。っていうかセンデロ・ルミノソはダメだろ。
実際、英語と車の運転ができれば、
軍事会社によっては誰でも採用OKぐらいに基準がユルユルなんだね。戦争バブルだから。
ちなみにイラク人傭兵は、給与が先進国の人間の10分の1近いです。フィジー、グルカも低め。
しかも任務が銃座の射手みたいな死にやすいところ。こんなところでも格差があって切ないね。
で、正規軍に比べて質の低い傭兵をなんで使うのかって話になるのだけれど、
まぁ正規軍の数が不足しているのでということだそうです。
それと正規軍の戦死者が増えると、国内世論が反戦に傾いちゃうでしょ? って感じで。
で、PMCが基地警備や、4回に1回は襲われる輸送トレーラーを警備しているおかげで、
米軍やイタリア軍や、自衛隊が安全にやっていけるって言う現状が。
イタリア軍にフラペチーノを輸送するために死ぬのは嫌ですね。
別にフラペチーノだけを運んでいるわけではないのだけどさ。
ちなみにちゃんと交戦規定を順守しようと務めているPMCもあるのだけれど、
まぁブラックウォーターみたいな会社が、
外道な行為を繰り広げてイラク人の怒りを買うので台無しだね。
しかしブラックウォーターは正規軍や他のPMCからも嫌われているって、よっぽどだな。
そしてこんなブラックウォーターが警備実績No.1なことに憤りを感じるね。
ちなみに作品の主題は、一人の若きアメリカ人傭兵の死を通して、
イラク戦争とPMCの姿を描くというものです。最初にこれを説明するべきだったね。
どこにでもいるような冒険心に満ちた若者の死は、ただ悲しい。